日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
受傷後10 年経過して偶然診断された外傷性総大腿動脈仮性瘤の1 例
内田 智夫
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2014 年 23 巻 7 号 p. 1007-1010

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抄録

要旨:鼠径部の総大腿動脈仮性瘤はバイパス術後やカテーテル操作に関連した医原性の報告が多く鈍的損傷によるものは少ない.その大部分は発症後早期に治療されている.偶然診断された鈍的外傷による総大腿動脈仮性瘤を経験したので報告する.65 歳男性,元消防士.下痢,体重減少の精査目的に施行した腹部CT 検査で最大径約50 mm の壁在血栓を伴う左総大腿動脈瘤を認めた.約10 年前,消防活動中に床を踏み外し左鼠径部を強打し血腫を生じたが自然に軽快したことがあった.破裂と塞栓症の予防目的に手術を行った.充満した器質化血栓を除去し,10 mm knitted Dacron 人工血管により置換した.動脈硬化性動脈瘤,感染性動脈瘤,ベーチェット病などの炎症性動脈瘤,医原性動脈瘤などが鑑別に挙げられるが,他部位の動脈瘤を認めず,発熱や炎症反応はなく,カテーテル検査や手術の既往がないことより鈍的外傷による仮性動脈瘤と診断した.

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