日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
重症下肢虚血に対し,内シャント造設により拡張した上肢静脈を用いたバイパス術の1 例
猪狩 公宏工藤 敏文豊福 崇浩井上 芳徳
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2015 年 24 巻 1 号 p. 59-62

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抄録

要旨:重症下肢虚血に対する血行再建術においては長期生命予後が期待できる症例では,大伏在静脈によるバイパス手術が推奨されているが,時に良好な自家静脈グラフトが得られずにバイパス手術が適応外となる症例がある.今回われわれは上肢静脈を用いて下肢血行再建術を施行した.症例は57 歳,男性.対側の血行再建術の際に両側下肢静脈を自家静脈グラフトとして使用したため,左踵部潰瘍に対する血行再建術に必要な自家静脈が下肢からは得られることができなかった.上肢静脈は細径であることからシャントを作製し発達させたうえで,自家静脈グラフトとして使用し良好な治療結果が得られた.下肢静脈が自家静脈として適さない症例においても,上肢静脈が使用可能な症例があり,また細径で直ちには使用できない症例においてもシャント造設後に十分な静脈径にした時点で使用することにより,良好な結果が得られるので,考慮すべき術式といえる.

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