日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
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症例
上腕動脈閉塞による手指広範囲組織欠損に対してバイパス手術が有効であった1 例
山尾 順駒井 宏好
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2015 年 24 巻 6 号 p. 883-886

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抄録

要旨:一般に上肢の急性動脈閉塞による手指の壊死はまれだが,閉塞後に虚血が残存し壊死が進行する例がある.症例は73 歳男性.既往症に脳梗塞,心房細動があった.自宅で倒れているところを発見され,近医へ脳梗塞の診断にて入院となった.左第1,2 指に広範囲な組織壊死を認め,近医にて壊死部の切断術とデブリドマンが行われた.皮膚欠損部に対しては皮膚移植が行われたが,植皮片は生着せず壊死が進行したため,血行再建目的に当科へ転院となった.血管造影検査では左上腕動脈の途絶を認めた.手掌部でのSPP は42 mmHg であった.心房細動由来の塞栓が原因の上肢虚血と転倒での左上肢の物理的圧迫による壊死と診断した.手術は上腕-尺骨動脈バイパス術と壊死部のデブリドマンを行った.術後約5カ月後には良好な肉芽形成と上皮化が得られた.重症の上肢虚血は下肢に比してまれだが適応を考慮すれば大切断を回避できると考えられた.

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