2015 年 24 巻 6 号 p. 867-870
要旨:外傷性膝窩動脈損傷は稀な病態であるが,迅速かつ適切な治療を行わなければ下肢切断に至る可能性が高い.今回われわれは2 例の外傷性膝窩動脈損傷を経験し,救肢し得た.症例1 は55 歳男性,側溝に転落し受傷した.左膝窩部に12 cm 長の切創があり,末梢冷感を認め,足背動脈は触知不可能であった.CT で膝窩動脈の完全閉塞を認めた.症例2 は53 歳男性,交通事故で受傷した.右足下腿の腫脹を認め,蒼白であり足背動脈の触知不良であった.CT にて膝窩動脈の完全閉塞を認め,脛腓骨の骨折も認めた.2 例とも仰臥位で大伏在静脈を採取後,腹臥位とし,後方アプローチで大伏在静脈を用いた血行再建を行った.症例1 は完全断裂であり,受傷から約7 時間,症例2 は動脈解離に伴う閉塞であり,約10 時間で血流再開した.2 例とも術後の下肢血流は改善した.膝窩動脈損傷に対して,仰臥位にて大伏在静脈を採取後,後方アプローチでの血行再建が有用であった.