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日本血管外科学会雑誌
Vol. 24 (2015) No. Supplement

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http://doi.org/10.11401/jsvs.15-supplement

Supplement
  • 抄録

末梢動脈疾患(peripheral arterial disease; PAD)は世界的に増加し続けており,米国の医療制度においてもPADによる支出は増大している.近年,PAD に対する介入率は全体として確実に伸び続けてきた. 人口統計の変化や技術革新,転帰調査のデータベースに蓄積される膨大な情報が,PAD の診療方針の決定に影響を及ぼす原動力となっている.PAD の治療は集学的であり,かかりつけ医や血管専門医によって担われているが,その診断能力および有する治療法は一様ではない.PAD は,無症候性から重度の虚血肢まで幅広い範囲に及ぶ.米国血管外科学会(SVS)の下肢診療ガイドライン委員会は,無症候性PADおよび間欠性跛行(intermittent claudication; IC)の診療を支援するエビデンスを調査・検討した.同委員会はGRADE( Grades of Recommendation Assessment, Development and Evaluation)システムを用いて,領域に特化した診療推奨事項を作成した.当分野における重要事項の多くにはレベル1 データが少なく,PADにおける有効性比較研究が緊急課題であることが示されている.そして,リスクファクターの修正や内科的療法および心血管系の状態や身体機能を改善させる運動プログラムを幅広く用いることに重点が置かれている.PAD スクリーニングの利点は今のところ裏づけがないように思われる.IC に対する血行再建術は,日常生活に著しい不便を感じている患者に対して,慎重に得失を検討した後に行うべきである.治療は,併存症や機能障害の程度および解剖学的要素に基づいて個別に決定されなければならない.IC に対する侵襲的治療は,確かな機能回復が妥当な期間持続するものでなければならない.有効性が少なくとも2 年以上継続する見通しが50% を超えることを最低基準として推奨している.解剖学的開存性(再狭窄がないこと)が,IC における血行再建術の有効性を保つのに必須であると考えられる.大動脈腸骨動脈病変を持つほとんどの患者や, 解剖学的開存性が上述の最低基準にみあう大腿膝窩動脈病変を持つ患者に対しては,血管内治療(endovascular therapy; EVT)によるアプローチが好ましい.反対に,長期開存が見込めない解剖学的条件(広範囲にわたる石灰化,小口径動脈,鼠径靭帯以下末梢のび慢性病変,runoff 不良)の場合には,IC へのEVT には慎重でなければならない.このような病変の患者,あるいはEVT が不成功に終わった患者で,手術リスクが低ければ,外科バイパス術が好ましい方法といえる.総大腿動脈病変は外科的に治療するべきであり,鼠径部以下のバイパス術には伏在静脈の使用が好ましい.IC の侵襲的治療を受けた患者にはサーベイランスプログラムに則った定期的なモニタリングを行い,主観的改善の記録,リスクファクターの評価,心保護的な薬剤内服コンプライアンスの最適化,ならびに血行動態および開存状態のモニタリングを行う.

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