2016 年 25 巻 p. 57-61
要旨:症例は60 歳女性.腹痛を主訴に近医を受診し,上腸間膜静脈(SMV)血栓症と診断され当院紹介された.前医CT でSMV の造影欠損と上行結腸の壁肥厚を認めた.SMV 血栓症,大腸癌疑いと診断し,抗凝固療法下に大腸の精査を進めていたが,入院3 日目にショック状態に陥った.CT にてSMV の造影欠損が肝内門脈まで進展し,腸管の広範な造影不良を認め,壊死を疑い緊急手術を行った.小腸の広範な壊死と上行結腸癌を認め,小腸大量切除と右結腸切除を行った.SMV から門脈内にかけて血栓と腫瘍栓を認め,Fogarty カテーテルを用いて可及的に除去した.術後も抗凝固療法を継続しSMV と門脈の再疎通を得た.原発巣と腫瘍栓は共に中分化型腺癌の病理所見であり,大腸癌腫瘍栓によるSMV と門脈内の急性血栓形成,鬱血性小腸壊死と診断した.大腸癌において主幹静脈が腫瘍栓により閉塞し,腸管壊死に至った例は極めて稀であり,報告する.