日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
急激に進展し腸管壊死を来した大腸癌の腫瘍栓による上腸間膜静脈閉塞症の1 例
田島 悠太後藤 均赤松 大二朗宮城 重人亀井 尚
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2016 年 25 巻 p. 57-61

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抄録

要旨:症例は60 歳女性.腹痛を主訴に近医を受診し,上腸間膜静脈(SMV)血栓症と診断され当院紹介された.前医CT でSMV の造影欠損と上行結腸の壁肥厚を認めた.SMV 血栓症,大腸癌疑いと診断し,抗凝固療法下に大腸の精査を進めていたが,入院3 日目にショック状態に陥った.CT にてSMV の造影欠損が肝内門脈まで進展し,腸管の広範な造影不良を認め,壊死を疑い緊急手術を行った.小腸の広範な壊死と上行結腸癌を認め,小腸大量切除と右結腸切除を行った.SMV から門脈内にかけて血栓と腫瘍栓を認め,Fogarty カテーテルを用いて可及的に除去した.術後も抗凝固療法を継続しSMV と門脈の再疎通を得た.原発巣と腫瘍栓は共に中分化型腺癌の病理所見であり,大腸癌腫瘍栓によるSMV と門脈内の急性血栓形成,鬱血性小腸壊死と診断した.大腸癌において主幹静脈が腫瘍栓により閉塞し,腸管壊死に至った例は極めて稀であり,報告する.

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