2016 年 25 巻 p. 97-100
要旨:膝窩動脈外膜囊腫は動脈の外膜と中膜の間に発生した囊腫の圧排により血管内腔が狭窄を来し,下腿以下の虚血症状を呈する疾患である.症例は71 歳,男性.1 カ月前より間欠性跛行が出現した.近医より動脈閉塞の疑いにて当院に紹介された.右下肢の足関節血圧/ 上腕血圧比(ABI)は0.80 であった.膝窩部の超音波検査と造影CT で膝窩動脈の狭窄を認めた.狭窄部周囲には囊胞を形成しており膝窩動脈外膜囊腫と診断した.外膜囊腫は膝関節部の関節包との連続が疑われた.後方アプローチにて手術を施行した.術中に関節包から連続する外膜囊腫を認めたため,これを結紮切離,囊腫とともに膝窩動脈を切除し大伏在静脈による血行再建術を行った.術後のABI は1.09 へ改善し,間欠性跛行も消失した.経過良好であり,再発は認めていない.本疾患の発生には関節に関連した組織が動脈内に迷入することが関与していることが示唆された.