2017 年 26 巻 1 号 p. 41-44
大動脈4腔解離の報告は少ない.大動脈3腔解離を経過観察中に4腔解離へと進展し,手術を行った症例を経験したため,病理組織学的考察を加えて報告する.症例は43歳,女性.Marfan症候群と診断されている.2008年に急性大動脈解離Stanford A型に対して当院で機械弁によるBentall手術と上行弓部大動脈置換術を施行した.術後から近医へ紹介し,当科では1年後のCTで残存解離に変化がないことを確認していた.2014年に施行したCTで3腔解離となっていたが,半年後のCTで変化がないため経過観察としていた.2015年に突然の背部痛を主訴に近医へ救急搬送された.その際に下行大動脈が50 mmへ拡大し,4腔解離となっていた.1週間後のCTで54 mmへさらに拡大し,当院へ手術の依頼となり,胸腹大動脈置換術を施行した.4腔解離は破裂のリスクが極めて高く,早期の外科手術が必要であると思われた.