2017 年 26 巻 2 号 p. 91-94
腹部大動脈瘤を合併した大動脈解離のうち限局性に解離腔が残存した症例は比較的まれであり,報告例も少ない.偽腔開存型の解離性大動脈瘤に対しては,真腔内にステントグラフト内挿し偽腔内圧を軽減させることが一般的であるが,本症例では,真腔が圧排されて狭小化しており,真腔内にはステントグラフトの留置に十分な血管径がないと判断した.そこで,治療は血管性状のよい部位に十分なLanding zoneを確保し偽腔経路でステントグラフトを留置し血行再建する方法を選択した.術後は脚閉塞などの合併症を認めることなく,良好な経過を経ることができた.