2017 年 26 巻 4 号 p. 213-216
症例は60歳男性.突然の腰痛と下肢のしびれを自覚し,その後路上で倒れているところを発見され,救急車にて当院に搬送となった.単純CTで腹部大動脈瘤破裂と重複下大静脈の診断となり,緊急手術の運びとなった.手術は左腎動脈上での大動脈遮断による腹部大動脈瘤切除および直管型人工血管による人工血管置換術を施行した.大動脈瘤頸部の前面を左下大静脈が斜走しており,テーピングした左下大静脈を頭側,尾側に牽引し展開することで,中枢側吻合を行った.術中に静脈損傷はなかった.術後経過は良好で術後20日目に自宅退院となった.重複下大静脈を伴った腹部大動脈破裂の一例を経験したので報告する.