日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
症例
異所性右鎖骨下動脈を伴ったStanford A型急性大動脈解離に対し,緊急の上行弓部大動脈置換術に続いて4日目に胸部ステントグラフト内挿術を施行し救命した1症例
髙橋 悟朗 小田 克彦鷹谷 紘樹寺尾 尚哉長嶺 進
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2017 年 26 巻 5 号 p. 251-254

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抄録

異所性右鎖骨下動脈(ARSA)を伴った急性A型大動脈解離を経験したので報告する.症例は56歳男性.突然の背部痛を主訴に救急搬送され上行大動脈から両側総腸骨動脈に至る解離を認めた.ARSAを認め,解離のエントリーはARSA起始部に近接していた.緊急で施行した上行弓部大動脈置換術では,直視下に観察できた左鎖骨下動脈までを再建した.ARSA起始部周辺は脆弱化が危惧され,かつ正中創からのアプローチでは外科的処置が難しいためあえて残存した.術後2日目のCT評価で,ARSA起始部および近傍の大動脈の拡大が確認され,術後4日目に胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR)を施行し,ARSA起始部,エントリーは閉鎖され,偽腔は血栓化した.ARSAを伴う急性A型大動脈解離に対して,ARSA起始部を上行弓部大動脈置換術では処置せず,術後早期のTEVARで対応する方法は,救命のために有効であると考えられた.

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