2018 年 27 巻 3 号 p. 229-233
下肢動脈瘤は胸部や腹部の大動脈瘤と比較して非常に頻度が低い.中でも深大腿動脈瘤は稀な疾患であり解剖学的特徴から早期発見が困難であることも多い.今回われわれは他の末梢動脈瘤経過観察中に偶発的に発見された深大腿動脈瘤の1例を経験したので報告する.症例は76歳男性.71歳時に冠動脈バイパス術,72歳時に腹部大動脈瘤人工血管置換術を当院で施行し,以後他院にて外来通院されていた.以前から両側大腿動脈瘤を認めており,経過観察のため施行した下肢動脈エコーで,左深大腿動脈瘤の存在を指摘され精査加療目的に当院へ紹介された.造影CTにて最大短径42 mmの深大腿動脈瘤を認め,左総大腿動脈も拡張していたため,左総大腿動脈および左深大腿動脈ともに人工血管置換術を施行した.経過は良好で術後10日目に自宅退院した.今回の経験から下肢の末梢性動脈瘤に対する診断,治療などについて文献的考察も含めて報告する.