2020 年 29 巻 2 号 p. 81-85
大動脈食道瘻(aortoesophageal fistula: AEF)は急性循環不全や術後の感染などで救命率も未だ低く,報告も少ない.とくに解離性大動脈瘤に起因するAEFの報告例は非常に少ない.今回われわれは解離性大動脈瘤に起因するAEFの救命例を経験したので報告する.症例は60歳,女性.51歳時に急性大動脈解離(Stanford B)の既往がある.吐下血を認め自宅で倒れているところを発見され,当院に搬送された.造影CTにて解離性大動脈瘤(最大径68 mm)を認め食道から胃内にかけて造影剤の漏出が疑われたためAEFと診断し,緊急手術を施行した.手術は,まず胸部下行大動脈人工血管置換術,大網充填術を施行した.さらに右開胸下に食道亜全摘術,食道瘻,胃瘻を造設した.その後二期的に食道再建術を行い,独歩自宅退院となった.