2022 年 31 巻 3 号 p. 135-139
Radiation arteritis(RA)は放射線治療の晩期合併症として知られているが,その診断は容易ではなく,通常の動脈硬化性疾患として治療されている場合が多い.RAの血行再建術は通常の動脈硬化性疾患と比し困難とされており,RAが疑わしい場合,その可能性を念頭におくことが重要である.今回われわれは,RAが疑われる右重症下肢虚血に対しバイパス経路を工夫した血行再建術を行い,良好に経過したので報告する.症例は77歳,男性.69歳時に右腸骨リンパ節領域に放射線治療歴があった.右踵部・膝部皮膚潰瘍を認め,照射範囲と一致した右外腸骨~総大腿動脈が閉塞していた.RAを念頭におき,右腋窩–右浅大腿動脈バイパス術を施行した.この際,腸骨稜上縁を通過させ,右鼠径部を迂回できるように経路を工夫した.術後速やかに皮膚潰瘍は治癒し,周術期合併症なく順調に経過した.