2022 年 31 巻 3 号 p. 141-144
腹部大動脈瘤(AAA)に対するステントグラフト内挿術(EVAR)後に結核性AAAと診断し,保存加療後に大動脈十二指腸瘻(aorto-duodenal fistula; ADF)を形成した一例を経験した.症例は84歳男性.膀胱癌にてBCG膀胱内注入歴がある.AAA急速拡大に対してEVARを行ったが,術後9カ月で瘤径が拡大し,type Vエンドリークと診断し再度EVARを行った.術後1カ月で発熱と瘤径拡大を認め,穿刺培養検査より結核性AAAと診断し,抗結核薬の投与を開始した.投与開始後7カ月目に発熱し,CT検査にて瘤内の遊離ガス像を認め,ADFを疑い開腹手術を行った.開腹所見にてADFを認め,瘻孔閉鎖,ステントグラフト部分抜去,大網充填術を施行した.BCG膀胱内注入歴のあるAAAは,結核性AAAの可能性に留意すべきである.また炎症が再燃した場合は,ADFの可能性がある.