2023 年 32 巻 1 号 p. 7-11
閉塞導管により血栓塞栓症を生じるstump syndromeが報告されているが,自家静脈を用いた下肢血行再建においても同様の血栓塞栓症が起こるかは明らかでない.症例は41歳,男性.7年前に大伏在静脈を用いて大腿動脈–脛骨腓骨動脈幹バイパス施行.3年前に静脈グラフト内血栓およびその塞栓による腓骨動脈閉塞・末梢吻合部狭窄に対し,対側大伏在静脈を用いて静脈–静脈側端吻合を行い静脈グラフト–前脛骨動脈バイパス施行.その後,中枢吻合をとった旧静脈グラフトの末梢側から中枢側に血栓が進展し,静脈–静脈側端吻合部狭窄が出現.静脈パッチ形成によるグラフト孔閉鎖術・吻合部狭窄解除術を施行した.術中所見でフィブリン血栓の突出あり,塞栓症を生じ得る状態だった.本症例により,stump syndrome類似の血行動態になれば,自家静脈を用いた下肢血行再建においても血栓塞栓症が起こり得ることが確認された.