2024 年 33 巻 6 号 p. 303-306
症例は86歳,女性.他院で施行されたCT(computed tomography)で胸部大動脈瘤を認め,当院を受診した.精査の結果,右鎖骨下動脈起始異常を伴う弓部大動脈瘤を認めた.起始部は囊状に拡張しており,Kommerell憩室と考えられた.瘤は弓部のZone 3に位置し,58 mm大の囊状瘤で,半年間で約3 mmの拡大傾向を認めた.破裂のリスクが高く手術の方針とした.患者は高齢であり,術式は胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR; thoracic endovascular aortic repair)を選択し,総頸動脈に手術操作を加えることなく,上行大動脈–両側腋窩動脈バイパスの2-debranching TEVARとした.脳梗塞発症も認めず,良好な術後経過を得た.今回われわれは右鎖骨下動脈起始異常を伴う弓部大動脈瘤に対してTEVARを行い,合併症なく良好な経過を得たため,若干の考察を含め報告する.