2019 年 56 巻 684 号 p. 110-117
現在,下水処理場からの放流水の水質の技術上の基準における衛生学的項目としては大腸菌群数が用いられている.大腸菌群数測定の公定法は大腸菌群以外の細菌を阻害する塩を加えた培地による平板培養法である.この方法は操作が煩雑であり長時間の培養が必要といった改善すべき問題点がある.そこで本研究では,下水中の大腸菌群数を簡易かつ迅速に測定できる技術を新規に開発した.本測定法は大腸菌群が特定酵素蛍光基質を分解する際に生ずる蛍光をリアルタイムで測定するもので,サンプル中の大腸菌群数と蛍光強度に強い相関があることを利用する.本測定法はサンプルを液体培地の入ったマイクロプレートに添加するだけという極めて簡便な操作のみで希釈も必要としない.大腸菌群数が200MPN/mL程度およびそれ以上の最終沈殿池越流水であれば2時間で測定が終了する.