水環境学会誌
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調査論文
諫早湾調整池からの高濁度排水が諫早湾内の短期的なアンモニア態窒素の挙動に与える影響
小森田 智大梅原 亮田井 明高橋 徹折田 亮堤 裕昭
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2015 年 38 巻 3 号 p. 75-80

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抄録

有明海奥部海域に位置する諫早湾潮受け堤防からの排水がNH4-Nの挙動に与える影響を評価するために,諫早湾内に9定点を設け,2012年9月18日から19日にかけて合計6回の高頻度観測を実施した。2012年9月18日16時頃に諫早湾潮受け堤防北部排水門の近傍において排水が確認された。排水直後には懸濁態窒素濃度が最大で100 μmol·L-1に達した。一方,NH4-N濃度については,排水時に大きな変化はないものの,潮位とともに変動し,9月19日の7時に最高値となる9.3 μmol·L-1に達した。諫早湾奥部の排水門近傍における水柱積算NH4-N量の時間変化をもとに,排水後のNH4-Nの増加速度を見積もったところ,NH4-N量の増加速度は平均1.8 mmol·m-2·h-1となった。これらの結果から,排水門近傍においては,有機物分解に伴うNH4-Nの再生産が局所的に卓越することで,赤潮を支える栄養塩の供給源の1つとなる可能性が示された。

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© 2015 公益社団法人 日本水環境学会
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