ある事務系オフィス (一つの「社会システム」) を環境監査の実験系として選択し, 導入と送出の実態監査を実施し, 「系」と「環境」とを明確に区分した具体的な方法論による環境監査の一つのモデルを提示した。
事務系オフィスにおいて, 導入部として導入資料 (持ち込む書類など) , コピー用紙, および配送物, 送出部として, 知的生産物 (報告資料など) , 資源化される紙類, および焼却される紙類について, 重量をその細目別に1993年11月5-12日の期間に実測した。系内の代謝・滞留部としては, うら紙の発生量と使用量を細目毎に計測した。実測されたデータをもとに, 環境監査の基礎的かっ基本的なデータとなる環境収支簿記を作成した。これは「社会システム」へ導入・送出される物質・エネルギーの総量と質の内訳を示す「物質とエネルギーの収支計算書」といえるが, 財務監査の損益計算書に対応するものである。
この環境収支簿記をもとにして, 本実験系と環境との関わり方の実態を明らかにし, 環境負荷低減のための提案を行った。この簿記はある特定の「社会システム」にのみ限定される特殊な表ではなく, 世界中の一般的な事業所すべてに当てはまる共通性をもったモデルであることを示した。