抄録
現在、わが国で進められている循環型社会の形成のためには、焼却灰の循環資源としての有効利用や最終処分場跡地の有効利用が課題となっている。そのためには焼却灰中の有害物質の一つである重金属の安定化が重要となる。本研究では、焼却灰中の重金属の安定化機構の解明のため、重金属の吸着現象に注目した。これまでの研究で埋立地でのPbの不溶化が確認されているが、Pbの濃度が低いためにPbの不溶化のメカニズムは特定が困難であった。そこで、焼却灰中の吸着機構解明のために、高濃度のPbCl2溶液に焼却灰を浸透させ、人為的にPbを焼却灰粒子に吸着させる実験を行った。Pb吸着操作を行った焼却灰粒子に対しX線回折分析、蛍光X線分析を行った。さらに薄片試料を用いたX線顕微鏡分析により元素分布を分析し、Pbの吸着部位および存在形態の把握を行い、埋立焼却灰粒子へのPbの吸着機構を検討した。吸着操作によりCaに富む焼却灰表面にPbの濃集が見られた。また、Pb3(OH)2(CO3)2の生成が確認された。