日本水処理生物学会誌
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ミジンコの生存、成長および再生産に対する従属栄養性鞭毛虫の餌としての影響
永田 貴丸廣瀬 佳則岡本 高弘早川 和秀
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2018 年 54 巻 3 号 p. 73-82

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抄録

本研究では、ミジンコ類の生産性への従属栄養性鞭毛虫の餌としての影響を評価するため、鞭毛虫キネトプラスト類を餌にした場合のDaphnia pulicaria(プリカリア)の生存、成長、再生産を調べた。また、同時に、細菌と緑藻のクロレラでもプリカリアの生存、成長や再生産を調べ、キネトプラスト類の結果と比較した。実験の結果、キネトプラスト類を添加した餌処理系では、細菌のみを餌にした処理系(細菌100%)と同じく、プリカリアは成熟に至らず、8日以内に死亡した。成熟、あるいは死亡(成熟まで達せず、死亡した場合)するまでの1日あたりのプリカリアの体成長を各餌処理系で比較した結果、クロレラのみを餌にした処理系(クロレラ100%)に比べ、キネトプラスト類を添加した餌処理系では、体長増加率(mm ind.-1 day-1)が非常に低かった。これらの結果から、キネトプラスト類は、ミジンコ類のプリカリアの生産に、餌として必ずしも大きく貢献しているとは限らない可能性が示された。従属栄養性の鞭毛虫については、ミジンコ類の生産性にとっての質にかかわる知見が少ないため、本結果は1つの貴重な情報となると考える。本研究から、透明度改善を目的とした生物操作(Biomanipulation)では、Daphnia属のミジンコ類がよく扱われるが、彼らは細菌や鞭毛虫からの微生物食物連鎖のエネルギーを効率的に利用できないケースもあるため、生物操作の対象現場に適したミジンコ類の種類を検討する必要があると考えられた。

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© 2018 日本水処理生物学会
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