抄録
無機水銀の活性汚泥への吸着とその際の基質除去活性に与える影響について放射性水銀 (203Hg) を利用して検討し, つぎの結果を得た。
(1) 活性汚泥の水銀吸着はSV25%汚泥の場合, 水銀濃度0.01~1.0mg/lの範囲内では100%近い吸着率を示した。5mg/lでは80%で, 吸着限界に達した。また, SV10%汚泥では25%汚泥と比較して低濃度においても吸着率の低下がみられ, 5mg/lではさらに低下を示した。
(2) 25%, 10%両汚泥の水銀吸着量を単位当り汚泥量に換算 (Hgμg/gss) した結果, 0.01mg/l濃度では同程度であったが, 0.1mg/l以上では10%汚泥の単位量当りの吸着能が優れており, 25%汚泥の2~2.5倍であった。
(3) 25%汚泥と10%汚泥の水銀吸着効率比を算出した。その結果で明らかのように10%汚泥の単位量当り吸着量は高いが, 総体的な水銀吸着能としては25%のように汚泥量の多い方が吸着効率は優れている。
(4) 本実験のKm値は0.01~1.0mg/lの範囲内では10-5であったが, 5mg/lでは10-3と大きくなり吸着率が低下することを示した。
(5) 水銀が活性汚泥に吸着した際の基質除去能に与える影響をBOD除去率で表わすと, 本実験の水銀濃度の範囲内では高濃度域の曝気初期に除去率の低下がみられたが大きな阻害とはならず, むしろ10%汚泥のように一種の剌戟作用を思わせるような現象がみられた。
(6) 本実験はRI (203Hg) をTracerとして利用したために水銀量の測定が高い精度で容易に実施できた。
(7) 以上本実験のようにRIを利用した実験方法を採用すれば, 水質汚濁をもたらす微量物質の代謝, 蓄積, 移動等のメカニズムが明らかにできるものと考えられる。
本研究の概要については第12回日本水処理生物学会大会において発表した。