抄録
新しいオンライン繊維配向計(誘電率測定型)を開発した。本方法は,間接法と言われる超音波法に対して,直接法と言われるマイクロ波法と同じ原理に基づいている。超音波法は弾性率異方性を測定するのに対し,本方法は誘電率異方性を測定するため,乾燥工程中の拘束の影響を受けず,紙の実際の繊維配向を測定する。また,全層を測定できること,フィルムの分子配向も測定できることが特徴である。実機マシンでの実用化試験を進めており,配向角が広範囲にわたって測定できることを確認した。操業中に意図的に繊維配向を変化させたとき,測定値が実際の繊維配向角度に追随することをオフライン機の分子配向計とSSTを用いて確かめた。
また本方法は接触式センサーを使用しているため,安定かつ高精度に測定するためには紙と測定ヘッドとを均一に接触させることが不可欠となる。我々は吸引方式によって紙と測定ヘッドとの接触状態の安定化を試み,良好な結果を得た。これによりオンラインでの繊維配向測定に目処がついたと考える。さらに,本方法は原理的に米坪(誘電率と関係)や水分量(誘電損失率と関係)を測定することが可能であるため,繊維配向と同時に米坪と水分量を測定する試みを開始した。今回は最新のデータを交えて報告する。