63 巻 (2009) 3 号 p. 317-324
クラフトパルプの漂白プロセスは旧来の塩素に替わり二酸化塩素を中心としたECF法が確立し,有機塩素化合物などの排出による環境負荷を以前よりも大幅に低減することに成功した。これをさらに推進し,将来的に二酸化塩素も使用しない漂白プロセスを実現するためには新たな漂白要素技術の開発が必要と考えられ,ひとつの可能性として紫外線(以下UV)を用いた光技術に着目した。
UVによる光反応でクラフトパルプの漂白,脱リグニンが起きることは古くから知られているが,既往の報告はいずれも効率が非常に悪く,また現行の漂白プロセスにどう組み合わせていくかという視点からのアプローチは皆無であった。そこで本報告では,光漂白の効率を飛躍的に高めるために,有効で現実性のある反応助剤や前処理方法について検討した。得られた知見を以下にまとめる。
(1) NaOHを助剤として,パルプスラリーにUVを照射することで漂白が可能であった。
(2) 前処理として加温酸処理が有効であり,光漂白効率が向上した。この理由として,パルプ中の鉄イオンが光漂白のメカニズムに関与していることが示唆された。
(3) UV照射とオゾン曝気を同時に行う促進酸化処理も,光漂白の効率向上に非常に有効であった。加温酸処理と促進酸化処理を利用することで,酸素脱リグニンパルプをUVで単独処理する場合と比較して電力消費量を約70%削減できた。
(4) 促進酸化処理によってヒドロキシルラジカルの発生が予想されるが,実機完成パルプをUV/オゾン処理して得られたパルプでは強度の明確な低下は認められなかった。
漂白に要するコストは依然として現行のECF漂白と比較してなお大幅に過大であるものの,既存の漂白シーケンスや効果的な助剤との併用など,条件の最適化を進めることで光漂白の効率を飛躍的に高められることが分かった。