紙パ技協誌
Online ISSN : 1881-1000
Print ISSN : 0022-815X
ISSN-L : 0022-815X
総合報文
細胞壁構成成分のケミカルマッピング
青木 弾松下 泰幸福島 和彦
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 70 巻 3 号 p. 308-315

詳細
抄録

飛行時間型二次イオン質量分析(TOF―SIMS)は高い平面分解能と表面感度を有するイメージング質量分析の一種である。本稿では植物試料を対象とした細胞壁構成成分のケミカルマッピングについて,TOF―SIMSを用いた研究例を紹介する。高分子成分は通常フラグメントイオンとして検出されるため,まず細胞壁構成成分のフラグメント化挙動について述べる。特に複数の構造単位および結合様式を有するリグニンについて,これまでに得られた成果をまとめる。
TOF―SIMSを用いた分析例として,植物中の特定組織・細胞におけるリグニンの相対量および化学構造解析について紹介する。心材成分の分布状況を分析することで,古材の辺材―心材境界を決定し,伐採年を推定した例についても述べる。さらに最新の研究例として,凍結試料を用いたcryo―TOF―SIMS分析について紹介する。これまで水溶性成分の分布をそのまま可視化することは困難であったが,凍結試料をcryo―TOF―SIMS分析に供することで,水溶性リグニン前駆体の細胞分布が明らかになりつつある。パルプ・製紙化学分野におけるTOF―SIMS分析例についても紹介する。

著者関連情報
© 2016 紙パルプ技術協会
前の記事 次の記事
feedback
Top