紙パ技協誌
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研究発表会特集
イオン液体を活用した湿潤紙力増強手法と水系での応用
市浦 英明廣瀬 友香増本 美咲大谷 慶人谷口 健二
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キーワード: P4含侵, T0その他
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2017 年 71 巻 11 号 p. 1263-1266

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抄録

この研究では,紙の湿潤紙力強度の向上を目的として,イオン液体を使用した手法の検討を行った。イオン液体として,塩化1-ブチル-3-メチルイミダゾリウム([BMIM]Cl)を用いて,その処理条件が湿潤紙力強度に及ぼす影響について検討を行った。最初に80-100℃で溶解した[BMIM]Cl(20g)にろ紙を5秒から30秒間浸漬した。次に,その紙をエタノールに含浸した後,蒸留水で洗浄を行った。紙を110℃,1.1MPaで5分間ホットプレスを行った。

イオン液体である[BMIM]Clで処理を行った紙の湿潤紙力強度は向上した。調製した紙を100ml蒸留水の入ったサンプル管に入れ,振とうを行うほぐれやすさ試験を行ったところ,[BMIM]Clで処理を行った紙は,全くほぐれなかった。この手法を用いて処理した紙の湿潤紙力は,わずか5秒間の処理で十分な湿潤紙力強度が得られることが分かった。使用した[BMIM]Clは回収し,脱水した後,再度同様の処理を行った。その結果,回収したイオン液体を利用した場合,バージンの[BMIM]Clと同程度の湿潤紙力増強効果を有していた。この結果,[BMIM]Clは,再利用可能であった。[BMIM]Clで処理を行った紙は,全てセルロース成分から構成されており,現状の湿潤紙力増強法であるポリアミンアミドエピクロロヒドリン樹脂の代替手法として,期待される。

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© 2017 紙パルプ技術協会
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