2018 年 72 巻 10 号 p. 1157-1162
1970年代の産業存続の危機を乗り切った製紙産業は,日本経済の大幅な減速(国内需要の停滞)に対処するため,業界の再編・統合による効率化,流通の合理化及び国際展開をはかった。業界の再編はある程度進行したが,国際展開は2002年時点では海外売上高比率が産業として最も低く,以前として内需頼みであった。
一方で,需要は減速するものの代替素材への危機感はまだなく,むしろ原料供給に余裕を与え,リサイクルを組み込んだ持続可能な産業と見なされ,存続に余裕を滲ませた。
技術面では,1960年代から積極的に使いこなしてきた半導体技術による装置の大型化・高速化が頭打ちとなり,その技術が海外に拡散,追い上げられだした。そかし,それを打開するための,次のキーとなる技術を見出せず,模索が続いた。
その間に,紙の本質を揺さぶり,次世代の技術の核となり情報化革命と引き起こす技術変革が始まっていた。