紙パ技協誌
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研究発表会/不織布・家庭紙特集
ライフサイエンスを指向したナノセルロースからの機能材料創製
寺本 好邦
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キーワード: T0その他
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2018 年 72 巻 11 号 p. 1228-1232

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抄録

10年ほど前に紙ベースのマイクロ流体分析装置(μPAD)の基本的な概念が提案されてから,世界中で活発に研究が為されてきた。一方,その要素技術の開発は,異なる専門的観点から実施する価値がある。本研究では,TEMPO触媒酸化セルロースナノファイバー(TOCN)のμPADのモジュールとしての合理的利用を提案する。まず,乾燥状態のTOCNは不安定な物質を安定に貯蔵し,湿潤時には生化学反応場として機能することを示す。TOCN水性分散液のチクソトロピー性は,インクジェット印刷性を与え,μPADの製造を容易にする。溶液中と比較して,湿潤時のTOCNネットワークにおける物質の交換には長い時間を要するが,このことはμPAD上での徐放性実現と反応キネティックスの制御と位置付けられる。TOCNを組み込んだ有機リン系農薬の半定量μPADの構築例も示す。TOCNを実装することにより,1枚の紙にさまざまな機能を組み込むことができ,μPADの設計の柔軟性と汎用性を向上させられるものと期待される。

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© 2018 紙パルプ技術協会
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