2020 年 74 巻 10 号 p. 1020-1026
酢酸テトラブチルアンモニウム(TBAA)/ジメチルスルホキシド(DMSO)混合溶媒を用いて,迅速なセルロースのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析系の開発に成功した。セルロース試料は前処理なしで30分以内に溶解,分子量分布測定は30分で完了し,プルランを基準として平均分子量を算出することができた。高純度セルロースサンプルでは,重量平均分子量(Mw)と粘度法による粘度平均分子量(Mv)の常用対数の間に高い線形の相関が認められた。パルプと市販セルロースパウダーでは,ヘミセルロースに由来するピークまたはショルダーが低分子量領域に現れ,多分散性が増大した。ヘミセルロースを含む場合においても,高純度セルロース試料とほぼ同様のMwとMvの相関が見られ,およその粘度重合度を推算することができた。本研究で開発した分析法は,複雑な操作を必要とする粘度法に代わる有力な重合度測定法になりうる。