2020 年 74 巻 5 号 p. 508-515
石油系プラスチックは,低コストかつ軽量で成形加工性に優れ,大量に使われている一方,マイクロプラスチックによる環境汚染が深刻視されている。本研究では,天然素材による石油系プラスチックの代替を目指し,セルロース誘導体の1つであるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を用いた木粉の湿式押出成形技術を開発することとした。まず細管式レオメータを用いて,水分量,HPMCの割合,木粉粒径が,30℃における木粉の押出流動性に与える影響を評価した。木粉とHPMCの割合を8:2から5:5まで変化させ,固体重量に対して70~233%の水を加え混練して得られる素材は,非ニュートン流体で擬塑性的な流動を示し,降伏値を有した。水分量,HPMCが多く,木粉粒径が小さいときに流動性に富む傾向にあり,水分量が特に大きな影響を与えることが明らかとなった。混練素材は,外径6mmのパイプ状に押出成形することに成功し,風乾して得られた乾燥成形品を「ウッドストロー」と名付けた。HPMCの割合が大きいほど,径は小さく,密度は高くなり,高強度の成形品となった。木粉はHPMCと水を適量添加することにより良好に流動させることができ,押出成形のみならず他の成形方法を適用して様々な形状のオール木質成形品を製造しうる可能性を見出した。