紙パ技協誌
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総説・資料
江津工場 MVRエバポレーターの操業経験
岡本 拓士
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2020 年 74 巻 7 号 p. 698-701

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抄録

日本製紙江津工場は日本で唯一のSP(亜硫酸蒸解)法によるパルプ工場である。工程で発生するSP黒液は,エバポレーターにて濃縮し,回収ボイラーの燃料等に利用してきた。近年,エバポレーターの濃縮能力が低下し,パルプ減産の大きな要因となっていた。そこで,パルプ生産量の増加を目的に新設エバポレーター導入の検討をおこなった。

SP黒液とKP黒液の性状比較,MVR(機械式蒸気再圧縮方式)と多重効用真空蒸発缶の比較,および工場エネルギーバランスをベースとした設備検討に基づき,MVRエバポレーターを選定,2019年に導入した。立上後の操業では,スケールによるヒーターの閉塞や,圧縮機の振動といったトラブルが発生した。ヒーターの閉塞についてはベーパードレンによる洗浄の強化,圧縮機の振動については開放洗浄を実施し,現在では安定操業に至っている。

これにより,MVRエバポレーター導入前と比較して,パルプ生産量の増加(111%)を達成した。さらにエネルギーコストは多重効用真空蒸発缶を導入した場合に比べ,13%の削減効果が得られた。

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