2021 年 75 巻 11 号 p. 1018-1033
タケのなかでも,モウソウチク(Phyllostachys edulis)は成長が早く,循環再利用に適した資源である。食素材への適用も可能なモウソウチクの利用を目指し,ソーダ蒸解によって製造したタケパルプから酵素・湿式解砕法を用いてセルロースナノファイバー(CNF)を調製した。このタケCNFは,食品添加物として認められている微小繊維状セルロースよりもナノ化が進んでおり,規格への適合を試験した結果,微小繊維状セルロースの範疇には収まらないことが明らかとなった。そのため,微生物を用いる変異原性試験,in vitro マウスリンフォーマTK(チミジンキナーゼ)試験およびチャイニーズハムスター肺由来細胞(CHL/IU)を用いたin vitro 小核試験を実施し,このタケCNFに変異原性のないことを確認した。さらに,1 wt%のタケCNF懸濁液を用いて,ラットに対する90日間の反復経口投与毒性試験を実施し,長期摂取可能であることを確認した。90日間の投与期間を通じて,いずれの投与群においても死亡例は認められず,一般状態,尿検査および眼科学検査において被験物質投与による影響は認められなかった。また,投与期間終了後に実施した血液学的検査,血液生化学的検査,器官重量測定,剖検および病理組織学的検査においても,被験物質投与による影響は認められなかった。雌雄共にいずれの投与群においても被験物質投与による毒性は認められなかったことから,本試験条件下における無毒性量(NOAEL)は,雌雄共に200 mg/kg/day以上と判断した。