紙パ技協誌
Online ISSN : 1881-1000
Print ISSN : 0022-815X
ISSN-L : 0022-815X
CNF特集
オールセルロース構造材の可能性
根本 純司福島 彰太田村 篤内山 雅彦笠原 勝次岡田 英樹
著者情報
ジャーナル 認証あり

2022 年 76 巻 2 号 p. 112-114

詳細
抄録

セルロースナノファイバー(CNF)でセルロースを接着させたオールセルロース材料であるバルカナイズドファイバーは,昔からある材料ではあるが,これからの時代に求められる環境,機能,感性という3つの価値を備えているため,再び注目を集めている。本オールセルロース材料の構造材としての可能性を広げるため,新たに接合や接着,プレス成形加工について検討した。

市販接着剤と従来の金属鋲の接着強度の値は,それぞれ0.7〜8.5 N/mm2と2.4 N/mm2であり,市販接着剤でも十分な接着強度を得ることができた。また,ホットメルト接着剤は,超音波を1秒照射するだけでも本材料を接着でき,最大接着強度は2.9 N/mm2と十分な値を示した。さらに,オールセルロース材料自体を用いた小さな紐状物を,ホチキスの芯のような結合材料として使用することができ,その接着強度は4.0 N/mm2となった。プレス成形では,プレスと材料の両方の条件を最適化することにより,材料自体の伸張,圧縮を最大限生かし,シワのない成形品が得られた。最後に,ラボベースでの接着試験の結果を応用して,市販品と同等のバッテリーケースを作ることに成功した。

これら成果を組み合わせることで,これまで使用されていなかった分野での利用も期待でき,本オールセルロース材料の構造材としての可能性を広げることができた。

著者関連情報
© 2022 紙パルプ技術協会
前の記事 次の記事
feedback
Top