2022 年 76 巻 6 号 p. 522-528
株式会社中部プラントサービスは,自社木質バイオマス発電設備「多気バイオパワー」の運営を行っており,運転効率化・保守の工夫改良を進め事業性改善に取り組んでいる。その数ある改善策のなかで最も効果が得られたものは「冷却塔方式 復水器冷却水系統最適制御システム」(以下「本システム」という)である。
バイオマス発電所等にある冷却塔方式の復水器冷却システムは,大気の状態により冷却能力が大きく変化する。しかも,高温多湿の夏季に合わせて設計するため,年間の大半が過冷却となり,動力の無駄が大きい。本システムはこの課題解決として,冷却塔方式の復水器冷却水系統の補機(冷却塔ファンおよび循環水ポンプ)の回転数を最適に制御し,発電設備の所内動力を削減するとともに,売電量を増加させる。具体的には,冷却塔ファンによる冷却風量と循環水ポンプによる冷却水流量の両方を制御して,冷却水の過冷却を防止し,冷却塔ファンと循環水ポンプの合計動力を最小にするとともに,復水器真空を一定に制御する。本システムを導入した自社発電設備では,動力削減量1,337 MWh/年(原油換算337 kL/年),削減率52.2%と動力量を半分以下とした。また,復水器真空値も年間を通して概ね一定に制御でき,タービン効率の向上に貢献している。
なお本システムは発電設備以外にも適用することができ,冷却塔を用いた機器冷却水系統であれば,同様の省エネ効果が期待できる。
本システムは一般財団法人エネルギーセンター主催の「2021年度省エネ大賞」製品・ビジネスモデル部門において「省エネルギーセンター会長賞」を受賞した。