紙パ技協誌
Online ISSN : 1881-1000
Print ISSN : 0022-815X
ISSN-L : 0022-815X
環境特集
工業化に伴う地球環境汚染を時空間的に俯瞰する
─水質を中心として─
柏田 祥策
著者情報
キーワード: X0その他
ジャーナル 認証あり

2025 年 79 巻 12 号 p. 1055-1061

詳細
抄録

人類の終末時計が89秒と評価されている。人類の存亡はひとえに地球環境の保全に懸かっており,とくに健康的な水の存在は非常に重要である。そして人類が使用するのは,地球に存在する水全体のわずか0.77%を占める淡水であるが,人類が実際に利用できる淡水は,水全体の0.00672%のみである。その淡水を提供する地球生態系を支える地球環境は,地球の表面を覆う薄い被膜のような存在でしかなく,非常に脆弱であり,一度環境破壊や環境汚染を受けると,その回復は簡単ではない。人類は産業革命以降の化石資源の大規模消費によって,大気汚染や水質汚染という局地的環境汚染を生み出してきたが,その範囲は地球規模にまで拡大して,回復不能な不可逆的な影響を生み出し,地球という惑星の限界を超えつつある。これを是正してネイチャーポジティブを実現するためには,グローバル・エコシステムとはエネルギーの不可逆的な一方向の流れを意味しており,人類の時間軸ではサーキュラーエコノミーはほとんど成立し得ないことを人類が理解したうえで,ハーマン・デイリーの三原則を実践しながら持続可能な社会構築を目指す必要がある。そのためには化石資源を用いない炭素収支の正常化が喫緊の国際課題となっている。人類が使用している化石資源は数億年以上昔の地球における炭素資源循環の遺物である。これを現代の炭素循環に外挿していることが現在の地球環境問題の本質的課題である。その課題を解決して現代社会における炭素収支を正常化するためには,太古の炭素資源ではなく,現在の炭素資源であるセルロースという森林資源を用いたエネルギー・物質生産というパラダイムシフトが絶対必要となる。

著者関連情報
© 2025 紙パルプ技術協会
前の記事 次の記事
feedback
Top