プラントにおける設備保全では,従来のBM(Breakdown Maintenance)から,巡回点検を主体とするTBM(Time Based Maintenance)へと変化してきた。しかしながら,TBMにおいても,故障の有無に関係なく保全を実施するなどして,保全コストの増大や故障率の悪化などの課題を持ち合わせている。近年,設備の高度化やプラントの老朽化に対応するための新たな保全方針として,CBM(Condition Based Maintenance)を目指す風潮となってきた。また,保全の現場では,点検員の高齢化や,労働人口の減少に起因する人員不足によって,技術伝承不足や技能低下が課題となっている。現場での測定や目視の結果から設備の状態を判断するノウハウ依存の方法から脱却し,客観的かつ均質な判断を行えることを目指している。
YOKOGAWAは本課題の解決に向けて,保全向けのセンサシリーズ「Sushi Sensor」を開発した。このセンサは,巡回点検の補完として,設備の状態を定量的に監視し,平常状態から異常状態に移行する予兆を捉えることが期待されている。センサは電池で駆動し,無線ネットワークによってデータを収集する。本稿では,加速度および速度,接触面の温度を測定するセンサを用いて冷却ポンプの傾向監視を行った事例を紹介する。事例では,設備の劣化状態を監視し,故障の兆候を把握することができた。Sushi Sensorによって,状態に合わせたメンテナンスを実施し,CBMの実現を提唱する。