1997 年 51 巻 8 号 p. 1208-1212,035
紙の表面構造が吸液特性に与える影響を動的走査吸液試験によって調べた。市販の上質紙および新聞用紙の水吸収では明確な表裏差があり, これは表面粗さの違いに起因すると考えられる。手抄き紙の調製時にウェットプレス条件と乾燥法を様々に変えると, 条件に応じて粗さ指数と吸収速度が変化した。ウェットプレス時にサンドペーパーを押し当てることにより粗さを調節した手抄き紙はサンドペーパーの粗さに応じた粗さ指数を与えた。水に対しては粗さ指数と吸収係数の間に一般に正の相関があり, 表面粗さ自体が吸収挙動を支配する因子であるが, 両者の関係はサイズ度にも依存する。アマニ油での走査吸液では粗さの違いがより直接的に粗さ指数に反映するが, 水の場合と異なり吸収係数には影響がない。各種の試料について粗さ指数と空気漏洩式平滑度試験値は広い範囲にわたり高い相関を示した。