紙パ技協誌
Online ISSN : 1881-1000
Print ISSN : 0022-815X
ISSN-L : 0022-815X
リグニン由来の中性ロジンサイズエマルションに対する定着剤の調製と評価
松下 泰幸安田 征市
著者情報
ジャーナル フリー

2003 年 57 巻 6 号 p. 882-892,025

詳細
抄録

中性抄紙における中性ロジンサイズエマルションの定着剤をリグニンから調製し, その性能評価を行った。リグニンはクラフトリグニン (KL) とフェノール化硫酸リグニン (P-SAL) を用い, これらを定着剤へ変換するためにマンニッヒ反応とグリシジルトリメチルアンモニウムクロライド (GTA) との反応を適用した。パルプ/サイズ剤/リグニン誘導体の単純な系で定着剤としての性能評価を行ったところ, マンニッヒ反応を行ったKLは定着剤としての性能を全く示さなかったが, マンニッヒ反応を行ったP-SAL (MP-SAL) については高い能力を示した。これらはマンニッヒ反応に用いるアミンの種類により性能が異なり, PKa値が高いものほど, 定着剤としての能力が高かった。
アラムを加えた系では, GTAと反応させたP-SAL (GP-SAL) およびMP-SALはともにサイズ効果を高める役割を果たした。これらサイズ処理した紙をクロロホルム抽出したところ, アラム添加のみの紙はサイズ効果がほとんど消滅したが, アラムに加えてMP-SALおよびGP-SALを添加した場合はサイズ効果が残存していた。従って, MP-SALおよびGP-SALはサイズ剤と繊維表面の結合を強める働きをしているものと思われる。
MP-SALおよびGP-SALは茶褐色を有しているため, これらの添加により白色度が低下した。クベルカームンクの理論から, 白色度85%のパルプではMP-SALおよびGP-SALを0.2%添加すると, それぞれ16.9%および4.3%白色度が低下したが, 白色度50%のパルプにそれらを0.2%添加した場合は, 白色度の低下は1.9%および0.6%に過ぎなかった。従って, 今回調製した新しいリグニン誘導体は高度の白色度を要しない新聞紙や中質紙用の定着剤として使用可能と考えられる。

著者関連情報
© 紙パルプ技術協会
前の記事 次の記事
feedback
Top