The Journal of Toxicological Sciences
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新規抗悪性腫瘍薬S-1のラット経口投与による13週間反復投与毒性試験
林 泰司長谷川 浩之田中 剛大郎大前 重男
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1996 年 21 巻 SupplementIII 号 p. 505-526

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抄録
雌雄のラットを用いたS-1の1.5,5,15 mg/kg/day (いずれもFT量),FT 15 mg/kg/dayを13週間連続経口投与し,以下の知見を得た。1. 一般状態の観察では,15 mg/kg/day群で四肢・顔面などの浮腫あるいは耳介の腫脹,貧血色がみられ,雄では自発運動の低下,削痩,皮温低下などを呈して多数が死亡した。生存例では,手掌,足底あるいは尾の角化がみられ,尾の角化が強度な例では先端が壊死・脱落した。2. 体重は,15 mg/kg/day群で投与開始後2週頃から増加抑制がみられ,投与開始後4~5週以降ほとんど増加はみられなかった。摂餌量は,15 mg/kg/day群の雄で投与期間を通して低値で推移した。3. 摂水量および眼科学的検査には著変はみられなかった。4. 糞潜血検査では,15 mg/kg/day群に陽性化傾向がみられた。5. 尿検査では,15 mg/kg/day群の雄に蛋白の増加傾向,ナトリウム,カリウムおよび塩素排泄量の減少がみられ,雌で蛋白の増加がみられた。6. 血液学的検査では,15 mg/kg/day群で赤血球数,ヘモグロビン量,ヘマトクリット値の減少,血小板数およびフィブリノーゲン量の増加がみられ,雄では白血球数の減少傾向もみられた。7. 血液生化学的検査では,15 mg/kg/day群で総および遊離コレステロールの増加,遊離脂肪酸,アルブミンの減少がみられた。8. 臓器重量では,5 mg/kg/day群以上で胸腺の減少,15 mg/kg/day群の雄に精巣の減少,雌に肝の増加がみられた。9. 病理学的検査では,15 mg/kg/day群で骨髄の赤色髄の減少,胸腺,白脾髄,精巣の萎縮および腎尿細管の変性ならびに皮膚あるいは口腔粘膜などの潰瘍性変化が認められた。10. FT投与群では,特記すべき変化はみられなかった。11. 回復試験では,いずれの変化も回復傾向が認められた。12. S-1の無毒性量は雌雄ともFT量として1.5mg/kg/dayであった。
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© 日本トキシコロジー学会
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