東京女子医科大学雑誌
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原著
低出力超音波パルス照射における仮骨形成への影響の形態的比較に関する研究
今野 雅之浅野 秀胤藤井 優輔小西 良幸村垣 善浩
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キーワード: LIPUS, ultrasound, cullus formation, CT, bone
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2017 年 87 巻 4 号 p. 108-116

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抄録

超音波はその非侵襲性に注目が集まり, 様々な治療に用いられるようになってきた. 中でも低出力超音波パルス (Low Intensity Pulsed Ultra-Sound: LIPUS) による骨癒合促進効果が広く利用されている. しかしながらLIPUS照射期間と時期の仮骨形成に関する研究では, 骨の機械的強度やX線画像による評価が主であり, 骨組織の3次元的な形態評価は少ない. 本研究はLIPUS照射による仮骨形成を3次元的に形態評価し, 骨癒合に最適な照射時期および期間を明らかにする. 7週齢の雄SDラットを使用し実験を行った. 大腿骨にドリルを用いて直径2 mm, 深さ2 mmの骨損傷を形成した. 炎症期が3日であることを考慮し, 5群に分け実験を行った. 骨損傷処置を行いLIPUS照射を行わなかった群 (0 L群), 骨損傷処置を行いDay 1~3にLIPUS照射した群 (1-3 L群), 骨損傷処置を行いDay 1~14にLIPUS照射した群 (1-14 L群), 骨損傷処置を行いDay 4~14にLIPUS照射した群 (4-14 L群), コントロールとして骨損傷処置を行わずにDay 1~14にLIPUS照射した群 (Cont群), 各群6匹の計30匹で, 実験日数は15日とした. LIPUS照射は周波数1.5 MHz, 繰り返し周波数1.0 kHz, 超音波強度30 mW/cm2, パルス幅200 μs, 照射時間は1日あたり20分間とし, 全群に対してDay 1, 3, 7, 10, 15にラット大腿骨のX線マイクロCT撮影を行った. 骨の癒合促進効果を3次元的に評価するために, CT値を元に軟組織を除く硬組織のボクセルデータの数を体積とみなした骨体積と平均CT値による骨の密度を比較した. Day 7, Day 10ではLIPUSを当て続けた1-14 L群の骨体積が大きく, 特に炎症期におけるLIPUS照射のない群との比較では有意に骨体積が大きいことから, 炎症期のLIPUS照射が特に重要であることがわかった. 本研究よりLIPUS照射は, 骨損傷直後から仮骨形成期までの間に照射し続けることが望ましく, LIPUSは特に炎症期に照射することで仮骨形成を促進させることが示唆された.

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© 2017 東京女子医科大学学会
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