抄録
ジェラール・ド・ネルヴァルは「ニコラの告白」の執筆を通して, 18世紀の作家であるレチフ・ド・ラ・ブルトンヌを研究した. 従来, この作品と「シルヴィー」との関係を論じる場合が多かった. 本論文においては「ニコラの告白」と「オーレリア」とを比較し, 類似した内容に着目して, それらの類似から重要なテーマを抽出した. 特に〈魂の不滅〉〈他の生〉〈贖罪〉を選択する, この選択はネルヴァル世界における重要度と, これらの二つの作品「ニコラの告白」と「オーレリア」における類似の箇所の頻度によるものである. これらのテーマは「オーレリア」の語り手“私”のオーレリアに対する愛に深くかかわっている. ひいてはネルヴァルの生の欲動と死の欲動に由来するテーマでもある. このようにネルヴァルは, 「ニコラの告白」の執筆により重要なテーマを見いだし, それらを「オーレリア」において大きく発展させている. つまりこの作品の執筆は一種の文学批評であり, 彼の思考のリズムは十分に「オーレリア」において生かされている.