抄録
フローサイトメトリーを用いた精巣細胞の分析法を酸化エチレンによる精巣障害の分析に応用し, 化学物質による精巣障害の客観的評価法としての有用性の検討を行った. Wistar系雄性ラットに酸化エチレン500ppm 1日6時間, 隔日, 6週間の曝露を行い, 精巣重量の著しい減少を認めた. この精巣細胞のDNAをpropidium iodideで染色し, フローサイトメトリーで分析したところ, 成熟精子に相当する1倍体未満(<C), 1倍体(C), 2倍体(2C), 4倍体(4C)に相当する, 4つのピークが得られた. <C, Cおよび4Cの細胞の, 2Cの細胞に対する比率を算出したところ, 曝露群で, 対照群に比して, <Cでは71.9%, Cでは53.5%, 4Cでは5.1%の減少が認められた. この結果は成熟の進んだ生殖細胞ほど障害が強いという組織学的検索と相関を示した. フローサイトメトリーによる分析法は, 精巣障害の有用な評価法と考えられる.