抄録
「古事記」は上・中・下3巻より成り, 上巻「神代」は日本のさまざまな神話群を一大集成したものである. しかしその成立事情から見れば, 「古事記」は官撰の筆録史書であり, 政治的意図が濃厚で, この意図に合わせて原資料は整理・統合・潤色されている. 従って「古事記」を真の神話とみなすには異論が生じるかもしれない. しかし動機はともあれ, 作中に姿を現わす神々には古代日本人の神話的な思考態度が強く反映されている. 本論では「神代」における「穢」の観念を基に古代日本人の生死観・罪穢観を考察する.