Journal of UOEH
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201Tl Single Photon Emission Computed Tomogramにて心筋虚血を証明しえた単冠動脈症の1例
飯尾 克己南立 秀和中村 次弘中島 康秀黒岩 昭夫
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1989 年 11 巻 1 号 p. 55-62

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抄録
15年にわたり, 労作と無関係な数分持続する胸痛を有する, 48才女性を心臓カテーテル検査により単冠動脈症(type L1 by Sharbaugh and White)と診断した. 胸痛時に誘導心電図にてⅡ, Ⅲ, aVF, V4-6 誘導のST低下を認めNTG舌下にて改善を見, また負荷心電図ではV5, aVF 誘導で約1.5mmの水平型ST低下を認めた. 201Tl Single Photon Emission Computed Tomogram(SPECT)ではstress時に前壁および後下壁の心筋虚血の所見が得られ, プロプラノロール負荷にて前壁虚血のみ改善した. 自覚症状の緩解にもプロプラノロールは有効であった. 本症例は単冠動脈症の痛型としてはSmithの1型, SharbaughとWhiteのL1型で比較的予後がよいとされるが, 胸部症状の原因としては冠動脈の解剖学的異常に伴うcoronary steal phenomenonが示唆される. 従来の冠動脈の器質的狭窄を基礎とする心筋血流分布異常の判定にSPECTが有用であることは言うまでもないが, 本例のように器質的狭窄を有さないcoronary steal phenomenonが主因と思われる心筋血流分布異常の看破においてもSPECTは鋭敏な検査法であった.
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© 1989 産業医科大学
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