抄録
18才女性の重篤蚊刺過敏症により悪性組織球症様病変をきたした1剖検例の報告である. 剖検時, 蚊刺部は陳旧化していたが, 全身諸臓器に組織化学的性質から'低分化組織球'と考えた細胞が白血病様に著しく浸潤していた. 骨髄・リンパ節で'低分化組織球'の増生は軽度であった. '低分化組織球'の組織化学的性状は, peroxidase(-), AS-DCl法(-), 種々免疫グロブリン(-), LC(-), PNA(+), LY(+), s-100(-)で, 単球一大食細胞系細胞であることを示していた. 細胞形態学的に貧食能がなく, α-NBEに強陽性であったことから, 単球-大食細胞系の中でも単球側のいわば幼若な組織球にあたると考えられる.本例は蚊刺過敏症による低分化組織球の増殖を証明した最初の報告である.