抄録
頸下浸水(HOI)時の下肢からの体液移動が, HOI による尿量の増加にどのように寄与しているかを検討する目的で実験を行った. 7名の健常男子と外傷に起因する両股離断者2名を被験者として, 1時間の安静座位の後, 中性温度(34.5℃)の水に3時間の HOI を行わせ, 1時間ごとに両下腿の体積と尿量を測定した. その結果,両下腿体積は HOI 3時間で192±20(平均±SE)ml 減少した(P<0.01). 健常者の尿増加量は, HOI 3時間で494±89ml であり, 下腿の減少率を大腿を含む両下肢全体の体積に乗じた両下肢減少量(508±53ml)に近い値であった. 両股離断者の HOI 時の尿量も明らかに増加し, 3時間で183±48ml であった. 以上より, HOI 時の尿の増加分は下肢からの体液の移動分によって賄われると考えられる. しかし, 下肢以外からの体液移動も考慮されなければならないことも示している. この実験の結果は HOI が浮腫を持つ患者の治療法として臨床応用できる可能性を示唆している.