抄録
エチレングリコール(EG)のラット肝におよぼす影響について薬物代謝酵素系を中心に検索した. 曝露群には1%EG水溶液を, 対照群には蒸留水を2週間自由に飲水させた. 2週間後の両群間では体重に有意差はなく, 肝および腎の体重当たりの相対重量も有意差はなかった. 全期間中の飲水量は対照群に比べ曝露群で1日平均13.5%の増加を認めた. 血液検査では貧血・肝障害・腎障害はみられなかった. 一方, 肝ミクロゾーム中のシトクロームP-450量は対照群に比べ曝露群で17%の増加を認めたが, シトクロームb5量, プロトヘム量, NADPH-cytochrome c reductase活性, NADH-ferricyanide reductase活性に有意差はなかった. また, 肝細胞質分画中のアルコール脱水素酵素活性およびグルタチオンレダクターゼ, グルタチオンペルオキシダーゼ, グルタチオン-S-トランスフェラーゼの各活性にも有意差はなかった. これらの結果よりEGの代謝における肝シトクロームP-450の関与が示唆された.