抄録
ウィスター系雄性ラットに塩化メチル水銀を10mg/kg body weight/day, 7日間連続皮下投与し, 全てのラットで後肢の交叉現象を認めた投与開始後15日目に脳内酵素活性について検討した. creatine kinase(CK)活性は大脳皮質では, 前部, 中部, 後部とも軽度抑制された. aspartate aminotransferaseとlactate dehydrogenase活性もCK活性の抑制とほぼ同程度に大脳皮質で抑制された. 線条体と小脳では, 明らかな酵素活性の抑制は認めなかった. 塩化メチル水銀は, 明らかな脳内CK活性の抑制をきたす酸化エチレンやアクリルアミドとは, 中枢神経障害の発現機序において異なると考えられた.