Journal of UOEH
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油症の臨床症状と病因
旭 正一
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1993 年 15 巻 1 号 p. 1-11

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抄録
油症の発生経過と症状を述べ, 原因物質, 検査法, 治療その他, 本症の研究の現状について概説した. 油症は昭和43年に九州北部地方に発生した中毒事件で, 食用油に製造工程でPCB汚染が生じたために発生した. 症状は, ざ瘡様皮疹・色素沈着などの皮膚・粘膜症状が顕著にみられ, これらの症状は, 年月の経過とともに軽減してきたが, 多彩な内科的愁訴が持続している. 認定患者数は, 現在約1,860である. 原因物質は, はじめPCB(カネクロール400)そのものと考えられたが, のちになって, PCDF, PCQなどのPCB変換体が存在することが示された. これらの物質は, 脱臭のための加熱工程で発生, 濃縮されたと考えられる. PCDFは毒性が強く, ライスオイル中の混入量は少量であるが本症の発病に大きく関与すると思われ, PCQは本症に特異性が高いので, 血中PCQ測定は本症の診断に有用であると考えられている.
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© 1993 産業医科大学
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